2021年6月11日
お坊さんをしていると、仏事に関してご質問を受けることがあります。
形式的なことやメンタル的なこと、ご質問は多岐に渡りますが、よく聞かれることに次のようなものがあります。
「供養は気持ちが大切ですよね?」
ご質問というよりかは、同意を求められるといった方がいいのかもしれません。
これに対して、
「おっしゃる通り、お気持ちは肝要ですね。」
と、お伝えしています。
お葬式の際にも、
「亡き人、大切な人をお見送りする上で、最も大切なことは、お見送りする方々の気持ちです。」
と、お話しすることも多いのですが、1つ付け加えなければならないことがあります。
それは、
「お気持ちだけ、心の中で思うだけで良いわけではない。」
ということです。
思うだけではなく、言葉にすること、行動していくことが大切です。
これは、供養に限った話ではないですね。
思うことと、言葉にしたり行動したりすることの大きな違いは何か?
それは、影響力の大きさだと思います。
先日、当寺とご縁のあった方のお通夜をお勤めさせて頂いたのですが、そのお通夜式にご会葬頂いた方々に対する御礼のご挨拶文に、次のような一文がありました。
「最期まで私を気遣い、『ありがとう』と声をかけてくれた夫の温かな面影を、忘れることはないでしょう。」
もし、ご主人が心の中で思っているだけだとしたら・・・
もし、ご主人が言葉にすることをしなかったのなら・・・
この一文は、なかったかもしれません。
思うだけでなく、言葉にすること・行動することがいかに大切か。
しかし、気をつけなばならないことがあります。
それは、先ほど申し上げた影響力の大きさです。
影響力が大きいゆえに、言葉にすること・行動することには、相応の責任が伴います。
影響力の大きさを自覚せずに、言葉にしたり・行動したりすると、思いの外、大きな問題を引き起こすことにも繋がります。
身近な例でいうと、ネット上の誹謗中傷でしょうか?
心の中で思っているだけなら、周りに与える影響はほぼ皆無ですが、言葉にしたり、行動したりすると、それが良くないことであれば、当然ながら良くない影響を及ぼします。
ですので、そのことをよくよく考えなければなりませんが、良いことも思っているだけでは、良い影響を及ぼすこともないのです。
「供養は気持ちが大切ですよね?」
確かにその通りですが、思うことはあくまでスタートラインです。
気持ちが大切ということを、言葉にしない・行動しないことへの肯定を意味しているのなら、それは違うかなと・・・
思うこと・言葉にすること・行動すること。
これらを整えていくことは、仏道修行そのものです。
会葬者に対する挨拶文を書かれた奥様自身が仰っていますが、ご主人の『ありがとう』を生涯忘れることはないのでしょうね。
たかが言葉。されど言葉。
南無妙法蓮華経。