当たり前という怖さ

2018年4月10日

随分と暖かくなってきましたね。

日によって寒暖の差がありますが、今日はとてもいいお天気で気持ちがいいです。

本日は午前中の法務もほとんどなく、お参りを終えお寺へ戻ってくると、よく見かける自転車が・・・

 

当山の檀家さんが、お墓参りをしておられましたので、少し立ち話をしておりました。

お話の中心となったのは、ご自身の商売のお話。

商売のあり方も昔と違って、その様相は多種多様になっています。

大きな変化を与えたのは、インターネットとSNSの普及でしょうか。

ワンクリックで物が買えてしまう便利さに、私もどっぷり浸かっております。

 

そんな中、昔ながらのやり方で商売をしておられる方からのお話に、次のようなお話がありました。

「最近のお客さんの中には、この商品を取り寄せてほしいとか、この商品をいついつまで置いといてほしいと依頼した後に、こちらから商品が届いたことをお伝えすると、もう他所で買ったのでいらないですとおっしゃる方がいたり、連絡が取れなくなるような方がいたりしてとても困る。お店としては、その商品を返品することが出来ないので、非常に悩まされる」

とのことです。

お店としては大きな問題ですね。

お話を聞いていて思ったのが、私自身もネットでの買い物が多く、買う場合もキャンセルする場合もワンクリックで済ませてしまいますし、完全にそれが当たり前になってしまっています。

キャンセルする場合も簡単に出来すぎてしまうので、相手方に無駄な労力や消費をさせてしまったことに対する配慮が、欠けてしまっているかもしれません。

きちんとしたシステムを構築している大きな企業ならまだしも、小さな商店や事業を展開しているところだと、なかなかそうもいきません。

 

以前、友人の焼き鳥屋の店主が、こんなことを言っていました。

「うちの店では、忘年会シーズンでの一見さんのご予約はお断りしているんです。」

商売のことを全く理解していない私からすると、忘年会シーズンなどの掻き入れどきに、団体で頂くご予約は有り難いように感じるのですが、常連さんや信頼関係のあるお客さんたちと比べると、突然のキャンセルが非常に多く、ひどい時には全く連絡のないまま来店がない場合もあるとのこと。

団体での予約が急にキャンセルとなると非常に痛手ですし、その準備に大きな労力を費やしている場合があります。

また、その予約のために、普段懇意にしてくださる常連さんのご予約を、お断りしなければならないこともある。

そういったことが理由で、お断りしているとのこと。

ふむふむ。なるほど。

キャンセルは致し方ないところがあるにせよ、相手の気持ちを汲むということは大切なことですね。

 

仏教では慈悲を大切にします。

慈悲をわかりやすい言葉で言うと、思いやりであったり、共感できる心です。

皆が皆、慈悲を持って行動すれば、このようなことにはならないのですが、『当たり前』というメガネが、自分の目を曇らせてしまうことは、往々にしてあることだと思います。

 

便利になったことで、知らず知らずに身についた『当たり前』が私にもあります。

自分で気づけることならまだしも、気付けていないところもたくさんあるように思います。

特に今回のキャンセルについてのお話は、私も相手に対する配慮を考えないまま、お手軽にしてしまっているような気がしました。

 

「自分が相手の立場だったら、どう思うだろうか?」

この問いかけが、大切かもしれません。